スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「新しい生活」   その4


            新しい生活

             その4

中年の男性が出てきて話し始めた。

お待たせしました。では説明会を始めます。私は小川と申します。どうぞよろしく。
今日も大勢の方々がここにおられます。最近では多いほうでしょうか。年代的には当然高齢の方が多いのですけど、若い方もおられますね。

さて年齢に関わらず皆さんが今抱いておられる疑問は、「ここはどこか?」ということだと思います。もう受付でお知らせしたとおりここは『この世』ではありません。では『天国』とか『極楽』かというとそうではありません。もちろん『地獄』でもありませんし『黄泉の国』でもありません。死後の世界、あるいは死者の世界ということになりますけど、それではどういう所かがよくわからない。それで正式ということではないですけど使われているのは『平穏の郷」です。ただ私たちは普段ここを単に『ここ』と呼んでいます。皆さんが今まで『この世』と言っていた所は『地上」と呼んでいます。

皆さんのお顔を拝見しますと穏やかで何事もないという印象を受けます。なかには何となく晴れやかでしかもかすかな微笑さえ浮かべておられる方もいらっしゃるようです。気落ちしたとか嘆いているという方はあまりおられないようです。殆んどの方が死にたくないと切実に願っておられたはずなのに、そして亡くなられてしまったにもかかわらずです。

なぜか皆さん解放感に満ちていらっしゃる。そうじゃないでしょうか。もうあくせく生きていく必要がありません。耐える必要がありません。辛いことからも逃れておられる。受験、仕事、はてしない競争、家事、育児、介護、あるいは病苦、虐待、いじめ、いさかい、裏切りなどなど。そういうすべての辛いことから解き放たれています。
幸せだと感じておられた方もその幸せを維持しなければならなかったですね。そのようなストレスとかも今は無くなっている状況ですね。

皆さんは『地上』に遺された人々を深刻に思いやることもないのでは。もうどうしようもないわけです。どうにもならない、どうなるわけでもない。責任も義務も感じない。まるで他人事のようにです。言い過ぎでしょうか。

個人的に私はこれは70年ほど前の終戦のときの人々の心理と似ているのではと思っています。もう戦争はない、だから死ぬことはない。その解放感たるや私たちが想像する以上ではなかったかと思います。おおっぴらには言えなくてもです。家が焼かれた、肉親が空襲で死んだ、夫や息子が前線で死んだ、そういうことがあったにもかかわらずです。妙に明るい気分が日本の人々、あるいはその一部を支配していた、私の想像ですけどね。
私たちは死者、戦後生きぬいた人たちは生者の違いはあっても心理的なものは似ている。

私が生前ロンドンに行ったおりに向こうの人にある絵を見せられたことがありました。広場で大勢の人が輪になって歌って踊っている。その輪の中は燃え上がる炎が描かれている。炎に照らされた踊る人たちの顔は狂喜に近い表情です。何の絵か。ペストが大流行した後、生き残った人々の死の恐怖から逃れた喜びの狂宴でした。





関連記事
スポンサーサイト

コメント

ijinさんへ

こんにちは。
いつも暖かいコメントありがとうございます。

そういうことはおっしゃらずにとりあえず100歳も目標にしてください。薬も含めて治療法などがどんどん発展しています。大丈夫ですよ。

終戦時食べるものがなかったことは大変なことだったでしょうね。

一人ひとりが生きていくことが苦労なのにそれを国が大事にしていないように思われますね。

平穏の郷-ここ

平穏の郷へ行けるなら、今でも好いですね。
どうせ余命いくばくもない81歳。

終戦の時6年生。
腹をすかせた毎日。何時になったら、もう少し食べられるのか。

政府に国民を助ける力なく、自分で死の旅へ旅立った人も多いと聞きました。
自分生きる力のある人は、書かれた内容と同じでしょう。PP。

Aquaさんへ

こんばんは。
あるいは死者は個性がないのかもしれません。
生きるということで様々の方策が個人個人で選ばれていたのが、そうではなくなったということでしょうか。
あまりストーリー性がありませんのでご期待に沿えるかどうか・・・。

ほんとにツライことを経験して、
このような心境に辿り着くのでしょうね。
同じような人たちが大人数集まったのを
想像すると少し怖い気もしますが、
このお話はこれからどうなっていくのかな。
続きも楽しみにしています^^
非公開コメント

プロフィール

ゆたか

Author:ゆたか
「ゆたかのブログ 2」へようこそ!
72歳 男 浜松市在住
病身なので更新は時々です。
なお植物の写真を載せていますがとにかく素人なので植物の名前は正確とは言えません。
小説も書くこともあります。
よろしくお願いいたします。

訪問者 カウンター

ご訪問ありがとうございます

検索フォーム

ブログ村

人気ブログランキング

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。