スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「新しい生活」   その33

          その33

「さぁ、着いたぞ」
「川上さん、大丈夫?」
川上さんは頷いた。
「椅子が足りないかな」
「あ、僕のところから持ってきましよう」
「そうしてくれる? 頼むね」
僕は自分のマイ・ボックスに椅子をとりに行った。僕のマイ・ボックスから一つ椅子を持って出たところで隣の津村さんと出会った。
「遠藤さん、遠藤さん、今日は」
「あぁ、津村さん、気づかなっかった。今日は」
「ずいぶんと久しぶりじゃない。どうしてた?」
「えぇ、まぁ・・・。津村さん、お元気のようで」
「いつもと同じよ。元気すぎるぐらいよ。椅子持ってどうしたの?」
「友人が新しくマイ・ボックスを借りたのですが、他の人もいれて3人なので、椅子が足りなくて」
「あぁ、そうなの。ね、私もご一緒していいかしらね」
「いいですよ。むしろお願いしたいくらいです」
「そうなの、じゃ私も。え~と、私も椅子を持っていくね」
「僕がお持ちしますよ」
「いいのよ。ここでは重さなんか殆ど感じないんだから、大丈夫よ」
「そうですか」

「持ってきました。この方、津村さんといって僕の向こう側の隣のマイ・ボックスを借りておられます」
「お邪魔じゃないかしら」
「そんなことはないよ。津村さん」
「あ、川端さん・・・だ?今日は」
「津村さんとはもう長い間の友達というか先輩というか」
「あら、私の方が長いのかしら。そんなことなかったと思うけど。川端さんの方が先輩よ」
「ま、どっちにしろそんなに違いはないよ」
「そうね。それもそうだわね。こちらの女性はどなた?」
「川上さんといって、僕と同じ日にここに来たんです。でも自分の家の様子をビデオで見てからちょっと元気がなくなってしまって」
「あら、そうなの。どうして」
「どうしてって・・・」
「ちょっと込み入っているようなんです」
「そうだな・・・、簡単に言ってしまえば、遺してきた旦那さんと川上さんのお姉さんの仲が怪しいというところでしょう。 あ、川上さん、ごめん。言ってしまってよかったかな。軽率だったかな」
川上さんはかすかに「いいえ」と言ったようだった。

「そうなの。それで気落ちしてしまったのね。ま、そういう話は多くはないけど珍しくもないのよね。時間がたてば元気を取り戻せるんじゃないかと思うけど」
「相当なショックだったようです」
「そりゃそうよね。旦那さんのことを信じていたんでしょ」

するとそれまで生返事しかしなかった川上さんが突然それこそ堰を切ったようにはっきりした声の調子でしゃべりだしたのだ。もう川端さんも僕もひどくびっくりした。
「えぇ、信じていたのはそうなんですけど。私が入院してからはなんだか少し二人の様子がおかしいかもしれないと感じ始めたんです。二人は全然そんなことはないふうでした。だけど古い言い方なのかもしれませんけど女の勘というのだと思います」

「私はなんのために生きていたんでしょう。なんのために苦しい闘病生活をしていたんでしょう。人を信じていた私がなんて愚かだったんでしょうか。そういうことなら早く死ねばよかったんだって・・・」
川上さんはまた涙を流し始めた。

          つづく


関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

ゆたか

Author:ゆたか
「ゆたかのブログ 2」へようこそ!
72歳 男 浜松市在住
病身なので更新は時々です。
なお植物の写真を載せていますがとにかく素人なので植物の名前は正確とは言えません。
小説も書くこともあります。
よろしくお願いいたします。

訪問者 カウンター

ご訪問ありがとうございます

検索フォーム

ブログ村

人気ブログランキング

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。