小説 「ちょっとした遠足」 その5
その5
「『うちのお母ちゃんが清(キヨ)は汗かきだから保冷剤とか濡れたタオルがいるんじゃない』って言ってたけど・・・」と清ちゃんが言った。
「そう、そう、私も保冷剤とか濡れタオルがいるんじゃないかと思ってて言おうとしてたんだ」橋本さんも同じことを言った
「そう言われれば必要品だね。暑いからなぁ。熱中症予防だよね。気が付かなかったよ。追加しておくよ」と正樹が言った。
「でもポケットティッシュぐらいの小さいので間に合うかと思うけどどうだろう」
「そう、小さいのでいいと思います」橋本さんが答えた。
「じゃ、濡れタオルと小さい保冷剤って追加で書いとくね。保冷剤ってけっこういつまでも冷たいよね。他に何かありますか?」
「スケッチブック持っていきたいんだけど、どうかな」と高橋君が言った。
「温室で花とか描きたいんだ。夏休みの宿題としてもいいからさ」
「高橋は絵上手だもんな。よく学校でも入賞して展示されるしね」篠田君が言った。
「市のコンクールでも入賞したことあるんだよな。僕も高橋みたいに上手になりたいよ」正樹が言った。
「いいよね、みんな。スケッチブックは希望者だけということでいいかな」
「いいで~す」みんなが答えた。
「JA倉本で休憩って書いてあるけど、あそこ休む所あるの?」古賀さんが訊いた。
「大きな木があって木陰があって、それにベンチも一つあるんだ。JAが置いてるそうだ。うちの家族で坂之上公園に歩いて行ったことがあるから、そういうこと知ってるんだ。全員が座れないけど交代で座れるし、それに地べたに座ってもいいんじゃないかな」篠田君が言った。
正樹のお母さんが居間に入ってきた。
「みんな、えらいなぁ。一段落したら梅ジュースはどう? うちの庭の梅でたくさん作ったのよ。冷たくておいしいよ。だから遠慮しないでね」
「あ、そういうことはしないって決めてたんですけど」橋本さんが言った。
「たいしたもんじゃないから、気にしないで。買ってきたわけでもないし、コップに少しずつだしね。出すのはこのジュースだけ。飲んだら忘れたらいいのよ」と正樹のお母さんが言った。
「いいのかなぁ」篠田君が言った。
「いいの、いいの。いいことにして。決まりのことは目つぶって」正樹が言った。
「じゃ、ご馳走になろうか」
「ご馳走じゃないから」正樹のお母さんが言った。
「じゃ、いただいちゃおうか」
「いただきま~す」
「どうぞ、どうぞ」
「うわぁ、おいしい!」
つづき
- 関連記事
-
- 小説 「ちょっとした遠足」 その6 2017/01/30
- 小説 「ちょっとした遠足」 その5 2017/01/24
- 素芯蝋梅を見て 2017/01/22
スポンサーサイト
コメント
Re: 共通の目標
> 出てきて楽しそうですね。
大人なし、子供だけでというだけでも子供って楽しんでいるように思います。
2017/01/27 09:57 by ゆたか URL 編集
共通の目標
目標に向かって皆、アイデアが
出てきて楽しそうですね。
5年生にもなれば考えもしっかりして
おりますね。
2017/01/26 06:22 by 緑の恋人 URL 編集