小説 「ちょっとした遠足」    その13

           その13

清ちゃんが後ろを振り向いて橋本さんに声をかけました。
「美佳ちゃん、大丈夫? 元気出してね」
「うん」
これまでとは逆に清ちゃんが橋本さんを気遣っています。聞いた誰かが苦笑しています。
「大丈夫だよ」と橋本さんは言いましたが声が小さくて顔も俯きかげんです。でも橋本さんだもの大丈夫でしょう。

やがて片側2車線の広い道路になって歩道も広くなって自転車男は「覚えてろ」と捨て台詞を言って走り去りました。子供たちに捨て台詞を言って、なんだか滑稽です。

正樹は今度のことでちょっと驚きました。とても意外だったからです。泣くなんてありえないしっかり者でとおっていた橋本さんが泣いたからです。他のみんなも学校なんかでは滅多に泣くことはありませんけど、でも橋本さんの泣いた顔に人が違うような印象があったからです。頬をいきなり強く叩かれたのですし、まだ子供だもの、そして女の子だもの泣いても不思議ではないのですけどね。正樹はしかし橋本さんの今まで知っていたのとは違った面を目にして橋本さんに対する気持ちがなんだか今までよりもっと身近で親しく感じられるようで、橋本さんってほんとにいい子だなぁと思えてきたのです。

暑い陽射しをものともせずみんなは黙々としかししっかりした足取りで、そして自分たちが計画して実行している小さなイベントに心持ち気が高ぶっているようですし、しかもわずかに得意気です。道は少しずつ上り坂になってきました。もう公園が近いのですね。大きな立て看板があって「ようこそ、坂之上公園に!  河野市坂之上公園」と書いてあります。

「坂之上公園」と書かれたアーチも見えてきました。もうちょっとです。

そしてみんなはアーチをくぐってとうとう坂之上公園に到着しました。
「やったぞぉ」
「到着だ! すごいよなぁ」ガッツポーズを取ります。
「うれしい~」
みんなそれぞれ声を出して嬉しさを表現してます。
戸川君が「写真撮りまぁ~す」とみんなを集めました。案内所とか食堂が入っている建物をバックに撮りました。みんな明るい嬉しそうな顔をしています。「はい、チーズ」とか「1たす1は?」なんて言う必要がありません。
正樹が「じゃ、戸川君入って」と言って代わりに戸川君も入ったみんなの写真も撮りました。2、3人ずつの写真もたくさん撮りました。
「公園内に限ってスマホで撮ってもいいことにします」と篠田君がみんなに言いました。
「でも他の入園者の方々の邪魔にならないようにお願いしますね」

小学5年の夏休みの素晴らしい思い出になるでしょうね。

         つづく










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コメント

No title

小学5年ぐらいまでがまだまだ素直で物事をそのまま見て成長していってるのかもしれません。6年生とかとなると斜めに考えたりし始めるのかも。
お読み下さりありがとうございます。

No title

健やかな心の成長って、いいですね!
ここまで皆で歩いてきた様子もありありと蘇ってきます。
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ゆたか

Author:ゆたか
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72歳 男 浜松市在住
病身なので更新は時々です。
なお植物の写真を載せていますがとにかく素人なので植物の名前は正確とは言えません。
小説も書くこともあります。
よろしくお願いいたします。

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