小説 「エメラルドの首飾り」  その3


             その3

その夜から3週間ほど経って達哉は仕事が遅くなりまた駅前のそのレストランで食事を摂った。相変わらずのカキフライ定食。注文を取りにきた例のウェートレスが「そう、カキフライですよね」というような笑みを浮かべていたが、達哉は気が付かないふりをした。
注文をしてからすぐに達哉の座っている窓際の席の隣にこの前も来ていた女性が座った。達哉は少し驚いた。
彼女の今夜はノースリーブの薄いベージュのワンピースで彼女の雰囲気にピッタリだった。

今日も暑かった。猛暑が続く。僕はいつものように冷たいピールを飲みながらタブロイド判の夕刊を読みだした。しかし彼女の様子も何とはなしにうかがっていた。前のガラス窓に写る彼女はぼんやりではあったけれど美人だった。こういう店には少しばかり違和感を感じるほどだ。
このレストランの向かい側はブティックなのだが明るく照明されたショーウインドーのマネキンを思わせるほどだ。

彼女はハンバーグ定食を頼んだようだ。美人も普通のハンバーグを食べるのだなぁ。彼女は小さなバッグからパンフレットを取り出して読みだした。距離があるのでよくわからないけどどうやら旅行のパンフレットのようだ。

料理が運ばれてきた。彼女は胸にナプキンを付けた。ハンバーグの汁できれいな服が汚れてはいけないからな。

食事が終わってコーヒーの飲みながらまた夕刊をめくる。隣の女性も食事を終え胸のナプキンを外し、さっきのパンフレットと取り出したけれど、そのうちの1枚が彼女の手元を離れて舞うようにして達哉の足元近くに落ちた。達也は身を屈めて落ちたパンフレットを拾い上げたとき隣の女性も身を屈めて取ろうとした。達哉は小声で「どうぞ」と言って手渡そうとして、その時彼女の胸に思わず目がいった。声にならない声が出た。「あっ」
女性は達哉が拾い上げたパンフレットを受け取り「どうもありがとう」と達哉に礼を言った。

達哉が彼女の胸に見たのは見事な大粒のエメラルドが付いた首飾りであった。

             つづく
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